空飛ぶITコンサルタント

企業内診断士のヨシダが「AI」「パン」「働き方」について語ります

本当にマラソンで札幌の宿泊施設は不足するのか 数字から掘り下げる

 1.なぜマスコミが「札幌は宿が足りない」と騒ぐのか

f:id:yoshidaagri:20191102140356p:plain

「肌感覚」「思いつきという名の仮説」

私もここ10年以上ビジネスで東京-札幌を年中行き来する身として、 肌感覚として「ホテルが取りにくいなー」と感じることが、特にここ数年よくある。取れても値上がりしている。高い。

この感覚は私だけではなく、出張ビジネスパーソン全体の肌感覚だと感じる。 都内でも4月になると「宿ありません(絶望)」みたいな背広姿が夜な夜なニュースになるし、 札幌でも「嵐が来ているためファンでホテル満室」というホテルマンがニュースになる。

こんな日々の報道に日々触れていると、オリンピックのような これ以上の需要が短期間に集中すると、当然「宿は足りないのでは?」という仮説に行き着く。 仕方ない。

但し懸念がある。本当にホテル、宿は足りないのだろうか。 殆どの国民が感覚で感想を述べている事に危機感を感じる。根拠のないホテル不足の情報は、結果観光客の出足を鈍らせる。 観光業に悪い影響を与え、社会厚生が押し下げられる。 これを中小企業診断士として黙ってみている訳には行かない。

 

2.オリンピックの1日当たり客数を計算する 

これは簡単。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会東京オリンピックの来場者予測は780万人としているからだ。 開催日数17日で割ると

オリンピック1日あたり約45万人の観客

 

 3.札幌でのマラソン開催の客を予想する

東京での45万人が、そのまま札幌の45万人ではない札幌は人口200万に満たない地方都市だし、「札幌遠いから行かない、金かかるし」というラソンに熱が無い人は、直線距離で800km、津軽海峡を超えてまでわざわざ札幌には来ない

ラソン熱は定量的に測れないので、東京と北海道の観光客宿泊比率からマラソン開催の客数を予測する。

宿泊旅行統計調査(平成30年・年間値(速報値)) (国土交通省観光庁)から札幌と東京の年間観光客数の比率を計算する。

 

全体 東京6120万人:北海道3527万人 = 0.576

外国人のみ 東京2177万人:札幌818万人 = 0.375

中間値 (0.576 + 0.375)/2 =0.475

比率を0.475とすると 札幌マラソンを見に来る客1日あたり

45万人* 0.475 = 21.39万人

かなり多いが、21.39万人は100%道外ではない。道内の客も含まれている

この辺の履き違えが、マスコミの報道で目立つ。勉強して頂きたい

 

4.札幌の宿泊余力を計算する

道内観光客の動向(北海道経済部観光局)平成30年10月 

8月は450万人泊 1日あたり14.5万人

一方道内の宿泊定員は31.5万人(都心部は11.8万人)

 

次に客室稼働率国土交通省官公庁資料「宿泊旅行統計調査報告(平成27年)」から考える。

北海道の客室稼働率は63.6% 定員稼働率は35%から40%

この統計から導き出せる事は以下の通り

14.5万人が来道、31.5万人の定員に63.8%の客室稼働率

つまり平均客室使用客数を連立方程式で求めると

31.5X = 100

14.5X = 63.8

--------------

17X = 36.2 X = 2.12人/室

最後に客室数を調査する。「北海道保険統計年報」平成27年度発表から取得した、

旅館+ ホテルの総客室数10.8万室

現在の客室稼働率63.8%だから

10.8万室 * 0.638 = 6.9万室が稼働しており、

10.8万室 - 6.9万室 = 3.9万室が空き室となる。

 

この投稿で求めたかった答えが出た。

北海道の8月、1日当たりの道外客受け入れ余力

3.9万室 * 2.12人/室 = 8.3万人

 

5.新国立競技場1つ分、8万人の受け入れ余力がある

この8.3万人は北海道の総力。北は稚内から南は函館。帯広釧路までワンチームで対応した結果なので少々注意が必要。知床に宿泊して、朝札幌でレース、なんて芸当は不可能な話。実はもう一捻りできる。

北海道の宿泊定員31.5万人の定員のうち、都市圏は11.8万人。実に2/3が都市圏ではない。温泉街に大規模ホテルが集中しているのを見れば想像出来るだろう。

都市部に限った余力計算を行う。

8.3万人 * 11.8 / 31.5 = 都市部の余力 3.1万人

 

確かにあまり都市部は余力が無い。総力を上げれば、余力がある。

 6.結論

・全道で8.3万人、都市部で3.1万人の受け入れ余力がある。

・札幌市のホテルは雨後の筍のように増えている為、この余力は減ることは無い。

・問題なのは宿泊施設ではない。来道客を支える航空機、鉄道、バス、公共交通といったインフラこそ問題になる。

7.終わりに

最後に本当に「マラソン/競歩」がオリンピックの花形なのか、国民は胸に手を当てて考えたほうが良い。 前回のリオオリンピック、貴方はラソンの男女金メダリスト、競歩の金メダリストを諳んじられるだろうか。私は無理だ。前回の金メダリストも知らない競技をよく花形を言えるものだ。正直何時も同じように国民がマスコミに踊らされている構図しか見えない。情けない

そういえば銀河英雄伝説ユリアンフェザーン駐在武官着任の際に、バグダッシュ中佐が送ったメッセージが興味深い。

「世の中に飛び交っている情報ってものには、必ずベクトルがかかっているんだ。つまり誘導しようとしていたり、願望が含まれていたり、その情報の発信者の利益をはかる方向性が付加されている。それを差し引いてみれば、より本当の事実関係に近いものが見えてくる」

 

いい言葉じゃないか。ゆめゆめ忘れてはいけない。  そして、今回の札幌移動で一番、利益を得るのは誰だろうか。それを考えるとこの騒動も面白い。